⑬・矯正の顎関節の治し方

私が歯科業界に入って38年間。その中で一番衝撃的な写真です

この写真が「顎関節症を治す」
一番のモチベーションになりました

藤田和也「顎関節症」(1993年)から

これは広島大学でのご遺体の顎の解剖の写真です

青の⇒の左側の4・5番のかみ合わせ(ガイド)はしっかりしているのに対し
赤の右側の4・5番(特に5番)は崩壊してます。そうすると、

しっかりしている方の左側の4・5番がガイドになっている

大本の右の顎関節は「再生修復(再モデリング)」が起きている

のに対して


右の崩壊している4.5番のガイドの大本の左の顎関節は

「やせ細っている」のです!

これには衝撃が走りました!

この写真を初めて見た当時、私は29歳で日本一規模が大きい赤羽歯科の本院に勤めて3年目でした。この写真を見るまで、4・5番のガイドについて一切知らず、ただ上下の高さを合わせれば良いだけだと思っていました。

これまで私は何にも考えずに治療していた !
大変後悔し大いに反省しました。

これ以降、今まで何となく避けていた
「顎関節症」の患者さんを積極的に 見ることにしました。

 下の図の「正常なかみ合わせの方」の3・4・5番の
かみ合わせをよくご覧ください。
4番・5番は下顎を前方位にガイドして顎を前方に固定してくれます。
 
つまり、下顎の4・5番が上顎の3・4・5番としっかりと咬合(ガイド)していると顎関節が病気でも再生(再モデリング)して顎関節を修復してくれます。
上3・4・5番、下4・5番の5本で下顎の前方位を確立できます。


顎関節症のほとんどが

顎が後方に行ってしまうことで起きます。

だから、4番抜歯の矯正は非常に危険です。
4番を抜くと、「上顎の3・5番と下顎の5番」とで3本の歯だけで

❶前方位を固定するガイド
❷側方に移動するガイド

を作らばければなりません!
しかも4番を抜いたあと5番の歯冠の形態は
4番と比べると非常に「弱い」形態です

❶4・5番は下顎の前方位の確保
❷3番は下顎の側方位の確保

を担っています。

だから私のインビザラインの矯正は現在9割は非抜歯です。
残りの1割は歯が多いせいで、歯の「ガイドがおかしくなっている症例です。

見栄えだけの矯正は致しません!


写真は⇓から

★かなり重要なので載せるのは2回目です★

矯正で顎関節の症状を起こすメカニズム

①#1のスタート

②#34、最初に前歯を圧下させたために

3番・2-2番が咬まなくなっています。

③上顎右の6番、5番が、頬側の咬合を作るために歯を回転させた為咬まなくなっています。6番は全く隙間が空いてしまっています。

上下顎3-3番が咬んでおらず、3番が回転してきています。

最後に咬合は回復していますが、約2年かかりました。

3番のガイドの位置が最初と違います!実はこれは3番は咬合していないのです

最初と最後で上下顎3番のガイドが
接触しなくなった!
実際最後は上下の3番は咬合していません


 こうやって矯正中に

顎が崩壊していくのです! 

この症例は
❶下顎の前方位の確保はOK
❷下顎の側方位の確保はXXX
です。

実は私が矯正をやるのは顎関節症の

「咬合再構成のため」です

審美のために歯を動かして体の調子が悪くなったら本末転倒です


30年前から 神奈川県菊名開業の「續先生(85歳)」の
ミニスプリントを多用しています。
続先生に会っていろいろご指導頂きました。

この昔の写真は顎関節が痛くなり、咬合調整したら
このようにメタルが目立つようになりました。
だから今はインビザライン矯正で治し咬合再構成しています。

先に顎や体の歪みをある程度直してから

インビザラインで正しい咬合の位置に矯正します

体の歪みに関しては「 足からバランスを作ります!」を参照

續先生は現在週3日のみ神奈川県菊名で診療しています。

症例④

左側の腕が上がらない!

精神的に落ち込んでいる。

後で出てきますが下記のような「全顎型のスプリント」は治療の為には使えません

のちに載せている、日本大学歯学部名誉教授「丸森 義二先生」の本には

❶放置することで顎関節症の7割は自然に治癒する
❷スプリントは全く必要なかった
と断言しています!

全く同感です。
続先生も「診断の為」にしか全顎型のスプリントを作りません

このタイプは2週間から1か月の間

「診断の為のスプリント」で使うならOKです

上記の上顎のスプリントに一週間後についた
下顎の歯の「顆路」の動きを開設します

赤の❶の右上の臼歯(大本は左の顎関節)は、イミディエートサイドシフト(関節頭が緩く関節渦の中を小刻みに横に動く)をしています。
(通常、顎が正常な方は、ここは「点」になります)

(上顎に描かれる「下顎を強制的に動かした場合」の顆路の軌跡の図を
次のスライドに載せています)

赤の❷の左上の臼歯の下顎の軌跡は、「点」であることがわかります。
これは正常です。
また青の❸の左上の3番は側方の動きをしていますが、この青の❹の右上側には3番の動きの跡がありません。

この結果、このスプリントに描かれる下顎の顆路を読み取ると

1⃣右上臼歯部のイミディエートサイドシフトしているのは、右下の臼歯部がサイドシフトしているのが描かれており、それの大本は「左上の顎関節」です。

2⃣右上3番が「ガイド」の跡がないのは、右下の3番がうまく上手く側方に動いていない(ガイドしていない)のを表しています。それの大本は「左上の顎関節」です。 

つまりこの検査用スプリントで判明したことは

「左上の顎関節」に問題がある!

という事です


全顎的なスプリント
(スタビライジェーション型)の欠点

①ある時期を超えると、下顎が徐々に後方に(上方に)変位していきます

②長期にスプリントを装着した場合、除去した時に顎の位置に大きなずれが生じます

「續先生」と「丸森先生」がおっしゃている事が一致します!

日本大学歯学部名誉教授・丸森義二「舌骨から紐解く顎機能の謎」

日本大学歯学部名誉教授・丸森義二「舌骨から紐解く顎機能の謎」

ミニスプリントを入れた歯は

その歯が圧下するので注意が必要です!

5番にミニスプリントを長期入れたために歯が圧下したために
FMCで咬合との隙間を埋めた症例

堀米の現在の治療法

14歳・女性・上顎左の顎関節が3年前から痛い

上顎左の4番にミニスプリントを入れました。
昼はミニスプリント・
上下左の4番が圧下しないように、 就寝時には全顎型の1.5㎜の「ナイトガード」を入れました。(レジンは盛り足していません)
ミニスプリントの頬側にわかりやすいように「くぼみ」を入れています。

3か月のミニインプラントに描かれたの顆路です。
この時点で、痛みは消失しています。

このミニインプラントに描かれた下顎の顆路を読み取ります。
左は患者さん、右上の写真が正常な顆路です。正常は「くの字」になります。

患者さんは現在15歳です。18歳~20歳までは成長が続くため、十分に顎が治る可能性が非常にあります。だから「くの字」になるまで、ミニスプリントは継続します。

顎関節症や顎の問題がある患者さんは

側方のガイドをつけるため

4番と5番は抜きません

セラミックは厳禁!
セラミックは砥石です!

これは金属のメタルガイドです

私は良く「金」を3番の裏につけます
頬側はこの写真のように少し金属が見えます
ある意味「しゃれおつ!」です
(徳島大学歯学部の診療方法)

3番のガイドの角度の設定は4番の側方と同じか少しきつくします

きつめにして顎関節が、慣れて来たところで咬合調整します

インビザラインの場合は、上顎の3番をゆっくりゆっくり(3週から4週毎にシートを交換)と傾けて(ルートブッカルトルク)、この金属と同じ作用になるようにします。

咬合を再構成して、結果、開咬(Open Bite)になってもOKな場合があります

症例①は、頭痛が毎日続き、乗り物酔いが

酷くなったために来院したケースです

  

4年間にいれた2-2番のメタルボンドで

咬合が高くなって顎が

遠心に下がったのが原因です

前歯部のMBで咬合を高くすると
下顎が後方に引っ込みます!

前歯部の被せものは、咬合を高くしない様に、要注意です

日本大学歯学部名誉教授・丸森義二「舌骨から紐解く顎機能の謎」

 
日本大学歯学部名誉教授・丸森義二「舌骨から紐解く顎機能の謎」 


症例②矯正の後戻りです

中高生に良くあります。

開口障害、耳鳴り、頭痛などを起こしました

ビフォー・前と前下、上顎左3番のガイドはあるが右はありません。

下顎が見えなくなるほど引っ込んでいます

上顎左右4番にミニスプリント

をいれる典型的な療法です

5か月前のビフォー、5か月後のアフター

下顎前歯部を比較してください

5か月前のビフォー・5か月後のアフター

5か月後は下顎が前に出ました!

 後方に下顎が転移した症例は3番と5番の前方の安定位置を探します。

B,ミニスプリントの

軌跡の意味がわかりますか?


ミニスプリントを入れた歯は

その歯が圧下するので注意が必要です!

5番にミニスプリントを長期入れたために歯が圧下したために
FMCで咬合との隙間を埋めた症例

挺出(ていしゅつ)」(歯が骨から出てくる)とは
「歯の移動方向のひとつ」です。
*対義語(逆の現象)は「圧下(あっか)(歯が骨にめり込む)です。
 
一般的に下記4枚のイラストのように
「歯を切縁方向(歯の先端)への移動」を指します。
(歯が出てくる「引っ張り出す」方向への移動)

神保町矯正歯科クリニックのホームページから

この右下6番(次をみると欠損している)は良くあるケースです。

主訴は右側の開口時のクリック音、左側の頚部の疼痛です

右の写真です。

6番が欠損してから7番8番が近心に倒れこみました

さらに、5番が遠心に動いています。
だから右下の咬合が低くなっています。

8番を抜歯して7を

UPライト(歯を正直)します

右上4番にミニスプリントを入れます

下顎の6番欠損で挺出している

上顎6番の形態修正をします

挺出(ていしゅつ)」(歯が骨から出てくる)とは
「歯の移動方向のひとつ」です。
*対義語(逆の現象)は「圧下(あっか)(歯が骨にめり込む)です。
 
一般的に下記4枚のイラストのように
「歯を切縁方向(歯の先端)への移動」を指します。
(歯が出てくる「引っ張り出す」方向への移動)

神保町矯正歯科クリニックのホームページから

上顎左右の5番4番3番の形態修正をします

臼歯部の近心への倒れこみは

きちんと直します

續先生、下顎右のBrを3回

左の補綴も1回やり替えています!

 

仮歯を金属に置き換えたとたん、経験不足では延々咬合調整がかかります。

續先生はこの治療をやって50年以上、
自院の技工士さん2人とプロの技で咬合調整するので短時間です

❶私のオリジナルのTEKの咬合面を

ジルコニアに置き換える方法!

Br(欠損あり)の場合が便利です。ポンティックの部分でインプラント用の

ネジをつかいます。回転防止のピンあります。TEKをジルコニアに変えます

歯の土台は先にジルコニアで作ります。


その後上のTEKを作りいろいろ調整します

ジルコニアにの土台にTEKやジルコニアのねじ止めした所です
金属でもOK!

ジルコニアの土台にTEK(手前)とジルコニア(奥)の咬合面パーツ
ネジ止め

ジルコニアの土台にTEK(奥)と
ジルコニア(手前)の咬合面パーツ
ネジ止め 

図のように片顎の庄タイプのスプリントで患者さんの病状の判断をします

後でこの模様の解説をします。

正常な咬合設定をどうするか? 

患者さんの咬合の変化をよく観察して

すぐに対応します!

調子が良い咬合になったら、臼歯部の隙間が空いたために、補綴で咬合をUPしている症例

症例③

 関節の動きを記録したこのワックスパターンである特徴がわかります。

それは何でしょうか? 

比較的若い人です。症例かデモの為全方運動を取ってなかった可能性があります。

デジタル咬合器では、咬合採得の際に患者さんに良く動かすように指導します。

咬合した場所は削れていますが、下顎が前方運動した時、遠心移動した時ののワックスパターンは削られていません。


デジタル咬合器は、ワンクリックでワックスパターンに顎の動きを記録できます。一歯から全顎まで、どの歯の補綴にも最適です! 

この変化は、比較的年をとった人の

ワックスパターンです

 

アナログのワックスでの咬合採得は、咬合位置だけの採得で
側方運動を記録せずに技工物を作ります。
デジタルはいろいろな顎の動きを採得できます。
普段の臨床のCKの咬合調整で、削る所の多くは前方運動や側方運動する所です。
前方運動や側方運動する所 の咬合採得をとっておらず、
その動きを咬合器に反映できていないからです。
 この症例のM近心を見てください。ワックスが削れています。
近心運動をしているからです。
またL舌側と頬側をみると、この人は遠心運動しているので、削れています。

これはサイドシフトと遠心運動が多いので

高年齢の人の症例です 


症例④

左側の腕が上がらない!

精神的に落ち込んでいる。

「診断のためのスプリント」を作りました

これは最初だけ咬合を上げる治療ためのもので治療用ではありません。

全学的なスプリント
(スタビライジェーション型)の欠点

①ある時期を超えると、下顎が徐々に後方に(上方に)変位していきます

②長期にスプリントを装着した場合、除去した時に下顎の位置に大きなずれが生じます

この症例は上顎左の3番の舌側に

メタルでガイドをつくりました。


 他の医院で

多数のインレーを同時に入れられました

そこで開口障害を起こしました

續先生はインレーを入れるのは必ず一歯ずつです。

症例⑤

顎が痛いので左のようなスプリントを入れられていました。

上顎左の4番に

ミニスプリントを入れました

補綴の治療では、3番の舌側に

メタルを良く入れます!

(見栄えを気にする場合はインビザラインで治療します)
顎の「流れ止め」や「アンテリアガイダンス」を鋭角にするためです。

私がやる場合は「金」で作ります。

 

このようなスプリントは使っても2週間です。
續先生は1週間以上は使いません 。
この形のスプリントは病状を確認把握するためのものです。
これを1か月以上使うと、臼歯部が圧下して、遠心に引っ込み、
そうして顎関節が上がってしまいます。

このスプリントの図を読みとくと

①下顎の左の咬合は動かない(右側の関節が動きにくい)・正常です

②右の咬合がは早期に動きます(サイドシフトする)・左側の関節が動きやすい

E,顎関節症の最近のトレンド

結局、顎関節症は

「保存療法」に落ち着ています

 

日本大学歯学部名誉教授・丸森義二「舌骨から紐解く顎機能の謎」 


 

日本大学歯学部名誉教授・丸森義二「舌骨から紐解く顎機能の謎」 


顎関節の症状で来院する人の分布

20歳台の男、25歳台の女に多いです。

75歳以上になるとほとんど病状は消えます。

 

本大学歯学部名誉教授・丸森義二「舌骨から紐解く顎機能の謎」 


私はこのタイプのスプリントは

使っても1か月です

状態の把握と最初の急性の処置のみ使用です。
(最初に顎を上げるだけ)
 長期使う場合は歯ぎしり防止にしか使いません。 

私は「ミニスプリント」と「ナイトガード」組み合わせで治療しています。

本大学歯学部名誉教授・丸森義二「舌骨から紐解く顎機能の謎」 

マウスピースは

「何の解決にもなっていなかった!」のです!

なんじゃそりゃ?!

通常の顎関節症は

70%は「保存療法」(何にもしない)でOK!

矯正や補綴治療で顎関節の症状を引き起こした場合はそれが原因です

私の治療は
①まず最初に顎の位置と、体のバランス・足のバランスを整えます。
そして
❶矯正は「インビザライン」
❷補綴は「ミニスプリント」と「ナイトガード」
で直します

以前は、ASOインターナショナルにマルチループを曲げてもらい
上下左右の咬合平面を揃えて咬合再構成をしていました。

今はインビザラインで咬合平面の設定が簡単にできます


赤い点は、咬合が強い・緑の点は正常です

これをすべて緑にする様に指示します
ビフォー

赤い点は、咬合が強い・緑の点は正常です

これをすべて緑にする様に指示します

アフター

 歯列は治せます

ですが

顎関節症を直すことは困難です

 矯正のゴールの希望も人様々です。
 
今よりも「Getting Better!」を目指します!